「押ささる」という表現は共通語にも広めるべきだ 〜カーリング女子日本代表で使われていた〜

雑記帳

※この記事は2018年2月25日に公開したものを再公開したものです。

今日で平昌オリンピックも閉会式、昨日はカーリング女子日本代表が銅メダルを獲得しましたね。

ある程度ルールがわかった状態で見た今回のオリンピックでの試合は、とてもおもしろく感じました。

 

そして、カーリング女子日本代表の LS北見 のみなさんの会話、北海道方言がとても話題ですね…。

北海道方言に気づかなかった…

“Getting a “crash course” on curling from Craig at Richmond Curling Club w @dwolfe56 & @wolowic” by noahbloom is licensed under CC BY 2.0

私の住む青森県八戸市では南部弁南部方言を話します。テレビでよく紹介される青森県の方言は津軽弁津軽方言であり、青森県の中でも主に日本海側で話される方言です。対して南部弁は太平洋側の方言です。

青森県はだいたい弘前藩と南部藩から成っていて、その藩によってお互いに話す方言も全く異なるので、双方の話す言葉は全くわかりません。

私の通う青森県に唯一ある高専には、津軽の方からも学生が通います(ほとんど学寮に住まうことになります)。そこで津軽と南部の学生が1つの場所に集まるので、互いの方言にびっくりします(少なくとも私はびっくりしたし、とても楽しかった)。

話を戻しまして、 #そだねージャパン が Twitter のトレンド入りするように北海道方言に注目が集まっています(そだねージャパンって…)。

トリノオリンピックから選手にマイクが装着されるようになり(カーリング – Wikipedia)、選手たちの会話がそのまま中継で放送されるようになったそうで、今回の平昌オリンピックでは LS北見 のメンバーが話す北海道方言が全世界に流れることになりました。

でも…その北海道方言に私は気づかなかった……。

聞いていて全く違和感がないのです。おそらく、北海道方言や青森県の方言にはとても近いものがあるのだと思います(その辺は頭のいい人に調べてもらうとして)。

「押ささる」「書かさらない」

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このような表現を使いますか?「押ささる」「書かさらない」

私を始め、北海道方言、青森県の方言を話す多くの人々はこれを共通語と信じて疑いません。日常でもよく使われるもので、仮にこれが方言だとしてもそれに対応する共通語が分からないのです。

このことについて数年前に Wikipedia で知ってとても驚きました。LS北見 のみなさんも話していたので今回記事にまとめることにしました。

~さる、~さらない

八戸弁 – Wikipedia にはこのようにあります。

「書かさる」・「寝らさる」・「押ささる」・「録音ささる」等のように用いる。共通語に直訳した場合「~できる」となるが、厳密には、生物以外の物に対する使役動詞の可能形と、一般の可能形の中間の性質を持つ助動詞である。否定の場合は「~さらない」若しくは「~さんない」となる。仮に、「このペンは書かさらない」という文を共通語に訳した場合「このペンは書けない」となる。…(略)

はい、一応「〜さる」という表現を共通語に訳すと「〜ない」となるんです。あれ、

先ほど仮にこれが方言だとしてもそれに対応する共通語が分からないと言いましたが…その理由はこれです。

(略)…仮に、「このペンは書かさらない」という文を共通語に訳した場合「このペンは書けない」となる。しかしそれでは、ペンが書けない理由はペンを使う側にあるのか、それともペンそのものにあるのかが判らない。そこでこの方言を用い「このペンは書かさらない」と表記した場合には、ペンそのものに原因があり(例えばインク詰り等)、書くことが不可能だという意味になる。このようにこの助動詞によって、共通語では表現できないことを判りやすく表現することができる。

そうです。「〜さる」、「〜さらない」という表現は自分ではなく物に原因があるときに使われる表現なのです。続けて例文があります。

FAXおぐらさんねーじゃ

これを共通語に訳すと「FAX が送れない」になりますが、「FAX が送らさらない」と言えば「私が FAX を送れないわけではなく、FAX の方に問題があって送ることができない」という意味になるのです。

この表現、めちゃくちゃ便利じゃないですか?

そして、これは北海道方言でも使われると書かれており、北海道方言 – Wikipedia自発的表現 を見ると

五段活用動詞の「未然形+さる」、上一段・下一段活用動詞の「未然形+らさる」で、共通語には存在しない自発的表現となる。一部の特定の動詞で用いられることが多く、「進んでそうしようと思っているわけではないが、状況が自動的にそうしてしまう」という心情を表せる。また、道具を主語に据えた際の道具そのものの性質・状態を表現するという意味では、中間構文としての性質もある。…(略)

(略)…共通語の「開けられない」「書けない」では、「しようとしているのに」の補足なしには、「自分にはできない」「不可能」の意味と同じになってしまうが、北海道方言の自発的表現「〜さらない」では「自分が悪いのではなく、対象物が悪い」の意味が内包されているため非常に便利であり、多くの場面にこの表現が当てはめられる。例えば、「この鉛筆、書かさらない」、「電気が消ささらない」。

またその逆に、人に向かって注意を喚起する際、この表現を用いれば「誰が悪いとは言わないが、対象物がそうなっている」という意味合いが出せるため、相手にあまり負担を感じさせずに言うことができる。「あの部屋、誰もいないのに、ストーブ焚かさってるよ。」「この値段、20%引かさってないんですけど。」

これは本当にわかりやすい説明です。Wikipedia 万歳?。

特に最後の「誰が悪いとは言わないが、対象物がそうなっている」という意味合いが出せるという部分には感動すら覚えます。話している自分たちにはそういうことに気づかなかったのですが、たしかに「ストーブ焚かさってる」は冬の時期によく使っています。

誇れる方言

私はこの事実を初めて知ったとき、とても誇れる表現、方言だと思いました。ロマンを感じましたし(?)、逆にこれを共通語でも使っていくべきだと考えています。

ちなみに、この記事を書くにあたって調べていたときに「北海道の方言まとめ」というページに出会いました。こちらもとっても面白いです。

私の身の回りでも話される表現について紹介されています。

  • ごみを投げる
  • 手袋をはく
  • うるかす
  • しばれる

……意味、わかりますか…?